今まで色々な方面からカナダの不動産投資状況について話をしてきました。今週は、年の瀬も近いことですので、私共が考える今後のバンクーバー市場における不動産需要及び、我々の今後の活動戦略についてお話ししたいと思います。

1)バンクーバーに対しての需要

私共としては、バンクーバーに対しての需要はこの先も継続すると思っています。それは再三にお話ししてきましたが、マクロ面では、1)カナダ銀行の常に素早い前向きな政策と市場誘導、2)コンサバな金融業界、3)信用格付け、4)自然(特に水)と立地などの利点。マイクロ的には、1)起業のし易さ、2)立地上の市の拡張制限、2)IoT(西海岸)、3)教育水準、4)人口流入などが促進根拠です。特に重要な順に並べた訳ではありませんが、全て今後の成長に関わってくる点ばかりだと思います。

このような状況の中で、今後のオフィス不動産市場は、現状の延長線上になりますが、二手に分かれて、さらに成長していくと思われます。大きく分けて、次の2点です:1)ダウンタウンを中心とする、典型的オフィスビルの高層化と密度化、2)元倉庫街がフレックス・オフィス(ロフト)となり、ハイテク、医療研究や未だ発明されていない分野の促進。(これらはインダストリアルになるかもしれませんが、オフィスとしてここでは書く様にします) これらは今でも存在し、このブログでも何度もお話しして来ましたが、今後は量的にもサイズ的にも大きく飛躍すると考えています。

2)区画用途について

では、具体的にどの様に変わる事が考えられるのかについて、お話ししたいと思います。先ず一つには、区画用途についてです。今までのバンクーバーは、需要面からも、各区画の隔たりが鮮明ではありませんでした。よって、オフィスビルの横にマンションが建っていたりすることもありました。しかし、今後はこの「混ざり」がさらに混合され、住宅兼オフィスの複合住宅や、店舗とオフィスと住宅が共存するアーバン・ライフ・スタイルが浸透してくると思います。もちろん、これらスタイルは他の都市では既に導入されていますが、今まさに国際都市への成長を試みているバンクーバーでは、相当斬新な試みです。

しかし、この複合化により、建物の構造や設備的にも、住宅部と商業部が独立した、合理的な設計が求められると同時に、システム的、オペレーション的にも24時間の運営体制が求められる事になります。更に、2025年までには新規商業ビルに対しては、エネルギー排出ネットゼロ政策が導入されます。これによる、複合ビルの場合の影響は、まだ明らかではありませんが、建築コストが上がるのは予測できます。現在の商業賃貸物件におけるイールドが、3%ほどですので、コスト上昇による、投資リターンの確保や、運営上における共益費削減を実行出来るかは、今後の大きな注目点だと思います。

3)密集化と高層マンションの竣工

住宅セグメントについては、現在は現状の供給不足を補う為に、密集化と高層マンションの竣工が注目されています。しかし、大まかな供給が行われた後の、高層マンション住まいのメリットは、理解が難しいかもしれません。もちろん、ダウタウンなど繁華街に住むメリットは挙げられますが、戸建て住居生活が「当たり前」となっているバンクーバーでは、繁華街以外での高層住宅物件に対する市場の受け入れ度が疑問です。中でも、高層ビル生活環境において、リビング・スタイルと生活面でのサポートは大きなものになると思います。建物のアメニティー向上から、近隣の生活の利便性や環境の向上も考えなくてはいけない案件だと思います。

例えば、宅配サービスを超える飲食提供サービスが出てきたり、居住者の為の新規生活サポート・サービスが共働き夫婦や青年実業家層の為に出てくると思います。既に存在する食材宅配サービスの延長で、その材料を使って各家庭専用に調理をしてくれるサービスや、バトラーサービス(食器持ち込み配膳)など、兼業主婦の家業負担を減らすサービスが出てくるのではないかと思います。それにより、新規雇用のみならず、一般スーパーの社会における立ち位置などにも影響してくるのではないかと思います。

4)バンクーバー市場の将来

また、バンクーバー行政の将来的目標は、ダウンタウンへの自家用車乗り入れ完全禁止を目指し、公共交通網を活用した、歩行都市を目指すと発表しています。インフラ整備や市民の理解などで、まだ達成には時間が必要ですが、2036年には世界一グリーンな都市を目指しているバンクーバー市としては、この試みは重要な政策になると思います。

今回は約10年後のバンクーバーを想定して、書いてみました。需要の促進と人口の上昇が日々めまぐるしく起きているバンクーバー市場の将来は、きっと私どもの予測を超えて発展すると思います。

皆様にとっても新たなプロジェクトへのヒントがある一週間になります様に。