3話目としては、購入契約書の条件などについてお話ししたいと思います。契約書は基本的には、弁護士マターですが、その内容や、どのような条件を入れるかは購入者の考えや戦略が反映されますので、契約書ほど、そのあとの不動産投資の行方を左右するものはないと思います。また、当初のオファーをどのような形で売主(もしくは所有者)に提示するかも、その後の契約が左右されるので、大事な検討項目です。そして、どの様な投資戦略を検討しているかによっても、オファー内容は変わってきます。なので、いろいろな状況について説明しながらも、私が考える上で、大事だと思う次の項目についてお話ししていきたいと思います。

1)オファー形態

まずは、1)オファー形態としては、どの様な形のオファーをするかという事で、これによって、購入意欲に対しての真剣度を見せたり、契約書作成時の時間や弁護士費用の節約などに繋がります。オファーの形態としては、LOI(Letter of Intent)といって、購入意欲を示す書類があります。この書類は法律的にBinding(法的効力)が存在するものではないので、合意後新たに売買契約書を交渉して締結する必要があります。もう一つの形として、PSA (Purchase and Sales Agreement)という一般的な売買契約書方式です。この場合には、契約書の概要をオファーという形にして提出します。このレベルで既にPSAの条件等の交渉が行われ、締結時には基本的売買契約が出来上がっており、これは法的効力を所持する書類になります。よって、締結後には書類を破棄する為には、なんだかのペナルティーが発生する事があります。

また各書類の長さですが、LOIの場合には、概要という事もあり、短いものでは5~6ページぐらいで収まってしまうものもあります。弊社のものですと大体10~12ページぐらいです。また、PSAになると別物で、こちらの売買契約書の平均長さが添付ページや参考ページも含めると、50~60ページになる事から、PSAのオファーでも20ページを超えることは良くあります。弊社の場合には、30ページぐらいです。PSAでのちの費用などを節約する為に、短く抑えると、デューデリ期間中に制限が出てきたり、瑕疵担保条件などで問題が出てくる事が多いので、オファーでもこれは契約書になりますので、このオファーのところで時間をかけて、しっかりした物を提出する事が今後の節約につながります。また、日本人の方々には、契約書が長くなると英語の読解能力面からも弁護士に全て丸投げしてしまう方も多い様ですが、これは弁護士の時間を掛けてでも、担当者が読まれ、弁護士と調整する事がプロジェクトの成功につながる最短距離だと思います。

参考:不動産売買に関わる契約書についてーPSAとOTP

2)クロージングまでの期間

ちょっと購入の流れには反しますが、オファーを出す場合には、全体の期間についても考慮しておく必要があります。通常の市場状況であれば、デューデリには45日間ほど、そしてクロージングには30日間の余裕を持つと良いと思います。しかし、数年前のバンクーバ市場の様に、複数のオファーが一件のリスティングに出てくる場合には、デューデリ期間が14日間やゼロデューデリなどという時もありました。しかし、クロージングは弁護士と行政のマターですので、最低でも14日間は必要と弊社弁護士に以前言われた事があります。その上に融資を得る場合には、弁護士と銀行側弁護士のコーディネーションが重要になってきます。ほとんどの弁護士は状況を理解している為、協力的ですが、偶には銀行側の弁護士でもとても融通の聞かない弁護士がおり、クロージング日を延長せざる負えない場合もあるそうです。

3)条件内容

次に、LOIにしてもPSAであっても、外せない条項が各投資戦略によっても違ってきます。例えば、物件保持のインカムを狙った場合には、賃貸契約や建物自体の瑕疵担保条件などが重要になってきます。しかし、弊社の様に、再開発がメイン戦略ですと、建物の瑕疵というよりは、土壌汚染や境界線の侵害が目の前の大きな問題になります。

インカム(賃貸)の場合

では、まずはインカム戦略を考えた場合の条件ですが、テナントに対しての売主からの協力同意は必須です。その上で、Estoppel Certificate(禁反言証明書)という、テナントからの契約書内容や賃貸支払いなどに対しての内容証明書を得る事で、収入の確認やテナントに対して大家からの約束事などの確認が取れます。このEstoppel Certificateは対テナント案件ですので、あくまでも所有者が対応する必要があり、法的にテナントは応じる必要がありません。売主からの協力事項としては、テナントと直接話す許可も取り付けておくべきです。テナントとの面接から、今後の賃貸予定や更新オプションの遂行予定(オプションが存在すれば)などについて、今後の物件収入状況が把握出来てきます。そして、行政への聞き込みについても、所有者からの協力同意を条件に入れておくべきです。物件の構造図面(違法建築確認等の為)や過去の固定資産税記録などを所有者が保持していなければ、行政から取り寄せる必要が出てくるからです。インカム(賃貸)の場合には、違法建築についても、行政の確認をとっておく方が無難だと思います。カナダでは、違法建築が発覚した場合には、即撤回義務が発生します。また、各テナントがテナントスペース内のテナント工事を行う場合にも、行政への申請が必要になります。その際には、行政の図面上での確認が含まれ、テナント工事申請の際、図面に誤差が発生すると、所有者はその問題を解消する義務が発生し、通達が来ます。特に、弊社の様に古い中古物件を購入すると、多くの物件では、正しい建築申請が行われておらず、無許可建築が多く行われている事があります。よって、インカムの場合には、特に図面の状況を確認しておく事が、金銭的分析上とても重要な役割を果たす事になります。

再開発の場合

再開発の場合には、土壌汚染問題は一番大きなハードルになってしまいます。開発申請を行政に提出した場合には、汚染の原因がどこに所在しても現所有者に洗浄義務が残ります。また、発生元が他の物件であったとしても、これは責任放棄理由にはならず、所有者としては、現症状を洗浄し、汚染が発生した側の近隣物件所有者を法的に訴えることになります。また、もし原因が隣でなく、その先の物件の場合には、隣の所有者のみを訴える事が出来る為、最終的原因解明には時間が要され、非常に複雑な法的処置になります。よって、土壌汚染に対しては、売主の責任移行時点を明確にすることが必須です。その上で、調査中にで判明した問題に対しては売主責任である事を明確に記載しておくべきです。そして、最後になりましたが、この様な状況を少しでも有利に管理する為にも、セキュリティーデポジットは買主の弁護士のエスクロー(信託口座)にて、クロージングまで管理する様に承諾しておいて貰うべきです。

また、最後になってしまいましたが、どの様な戦略であっても弊社が一番気を付けている項目はRepresentation and Warraty(表明保証)です。これは、所有権が始まった以降に偶発的な負担の発生に対しての保証になります。不動産購入では全ての項目が購入期間中に見えたり、確認する事が出来ない部分がありますので、この様な項目が存在します。内容はテナントの急な退去や倒産、物件の構造上の崩壊や火災など、所有権を受け継いだだけという立場では、防げない(調べようがない)項目についての保証が記載されています。期間や項目については、弁護士ともよく事前にご相談される事をお勧めします。

今回は非常に長いブログになりましたが、契約書についての主な点をお話しさせて頂きました。

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