先週からの売却についての話はとても大事だと思うばかりに長くなってしまいましたので、今週も引き続きお話ししていきたいと思います。今週はデューデリ用のファイルが出来、次のステップであるオファーを受け取るところから、お話していきたいと思います。

1)オファーを受けて考えること

オファーが入ってきた時点で、考える事が幾つかあります:1)オファー価格の適正、2)条件とクロージング期間の検討、3)クロージングまでの更なるコストや作業(もしあれば)。これらが全ての検討事項ではないですが、一般的な観点から見たものを挙げてみました。#1のオファー価格の適正は先週(第78話「不動産投資 – 売却(1)」)でもお話してありますので、オファーが入ってきた時には、ご自分の必要価格と市場価格の理解が既にされていると思います。#2と#3については、少々時間を要して検討する必要があります。5年以上満床期間が継続する物件の売買の場合には、通常それほど問題になる項目はありませんが、10%以上の空室がある物件(特に古いもの)の場合には、マーケッティング費用とこの先の空室継続の可能性として、価格の割引を求められる事が頻繁にあります。例えば、テナント入居にかかる仲介費、テナント入居までかかるであろうXヶ月分の家賃割引、テナント工事代の負担など項目は色々あります。その上に、築30年以上の物件であれば、設備の入れ替えコストなどを持ち掛けてくる購入者もいます。これら条件付きオファーについての対処法で先ず考えるべき点は、今回提示されている売り価格です。安く売る必要があると言っているのではありませんが、売買の場合には、やはり購入者にとっても買う価値のある価格であると思える必要があります。そして、その価格にはこれら新規テナント誘致費用が考慮されているかは交渉を有利に進めていく上でも大きなポイントになります。

条件付きのオファーに対しては、物件の市場内でのポジションを再度検討する必要があると思います。(これは先週の市場価値でご説明するべきでしたが、今週もう少しお話ししたいと思います。また、この点は物件を売り出す時点で検討しておく必要があります)先ずは市場の状況を確認するべきです。現市場が売主市場なのか、買主市場なのかは重要な検証項目です。この状況により、買主が出してくるオファーの条件にどれだけの信憑性(誠実性)や要対応項目なのかが理解できます。買主市場である場合には、各オファーが貴重になる事から、全ての条件に対して真剣な対応と誠意を見せる必要があります。その上で、どうしても同意出来ない条件が存在する場合には、次のオファーを待つか、物件を売る必要性の有無も検討する必要があると思います。買主有利の市場ではトロフィー物件でない限り、オファーが舞い込んでくる頻度は少なく、入って来ても「これで売れる」と思うより、「条件はどれだけ悪いんだ?」ということが先に浮かんでしまった事を思い出します。また、売主市場では、買主が数少ない物件を追いかけるわけですら、前段落で挙げた様な購入条件は少なくなると思います。それ以上にタイミングやマーケティング方法によっては、競りの状況を作り出す事が可能になり、状況によっては売り出し価格以上の価格で売却出来るかもしれません。

2)カウンター・オファーと仲介業者

オファーに対してのカウンター・オファーを出す上で先ず知っておく必要がある事は、オーナーと仲介の間で話す以上に仲介業者間では話し合いがもたれていて、水面下で交渉が繰り広げられていると言う事です。勿論、仲介はクライアントの許可なしでは、条件などに同意する事は出来ませんが(ライセンス違反行為になるので)、ある程度の落とし所の探り合いは常に起きています。よって、他のブログでもお話しした様に、クライアントは仲介との話を綿密に行っておくことや仲介をオーナーのチームメンバーの「信者として洗礼する」事はとても重要な行為だと私は考えます。具体的に言うと、投資の戦略やクライアントの考えや人間性にBuy-Inさせ、クライアントの為に一肌脱いでくれる人間にする事です。多くの業界関係者が仲介との関係はディールベースで(また仲介も同様に考える傾向がある為)、関係の継続や親密性が宿らないのが現状です。でもこの関係を次のレベルに持っていく事で、実際に物件の売り役である仲介からの貢献は大きなものになり、結果価格や売却条件などを通じて売主寄りの条件が達成可能になると私は思っています。

脱線したので、話を戻しますが、カウンター・オファーを提示する場合には、常に「ゴール」に向かう事は大事な事です。返事を極端に遅くしたり(日本企業の対応はわざとでなくてもこの傾向が多いです)、カウンター・オファーの内容に相応の進展がない状態で返信したり(それがワザと交渉に更なる余地なしと言う表明であれば別)。。。などと言う対応は暗礁に乗り上げ、その後の交渉は著しく難しくなります。当初のオファーは当初の想定価格と全く異なるかもしれません。その場合には、返答を拒否するか(よって交渉を終了するか)、自分の当初の目標に持っていくか、新たな解決ポイントを見つけるかなどの、オルターネーティブな方法を見つける事が必要になります。

その様な状況で役立つのが仲介です。両者(買主側と売主側)仲介の仲介費はそもそも売主が支払う為(賃貸借の場合も同じです)、仲介の忠誠心は通常売主側にあります。よって、売主側の仲介をメッセンジャーとして、買主側の仲介を通じて購入者の落とし所の探りを入れたりする事も手段として存在します。また、仲介を使ってカウンター・オファーの意味合いや目的を書面とは別に伝達してもらう役割を託したりもします。この様にして、当事者同士が直接交渉しない状況ではいろいろな手段を使って、状況を和らげ、ゴールに持っていく試みが可能であり、必要になります。

3)合意後のプロセス

最終的に価格や条件で合意がなされた場合には、この先は以前の購入のブログで書いたプロセスと同じになります。ただ今回は買主側でなく、売主側になります。そして、この先は弁護士同士による売買契約書の同意と締結になります。契約書の締結と同時に、金銭の払込があり、弁護士の方で全ての経費を振り分け支払いが行われます。通常売却の場合には、仲介へのコミッションも弁護士の方から支払われる仕組みになっています。売主としての最終的な仕事はタイトル(不動産登記簿謄本)に署名をして物件所有の権利をリリース(手放す)事です。そしてこの署名をした書類は弁護士によって、BC州の法務局に値する所へ送付し、登録の変更を行ってもらう事になります。これにより、今後の固定資産税や光熱費などの請求も終了する仕組みになっています。

ただ、殆どの契約書にはReps & Warrantyという条項が含まれており、これはその契約に対しての表明と保証を意味します。「表明」とは契約書や物件の内容に知る限りで過ちがない事や売主として誠実に対応した事などの意思を表すものになります。そして保証では、物件に著しい問題がない事や売主の知る限りでは各設備は正常に稼働しており、テナントからも退去申込や訴えを控えていない事を保証するものです。期間は物件や物件のサイズにもよりますが、通常は6ヶ月から1年ぐらいが妥当な期間だと思います。その上、もし万が一何か設備の不具合が起きたとしても、殆どの場合が修繕で対応され(もしくは保険費用が上増しされない場合には、購入者の保険で対応するので)、売主に対しての請求は稀な場合が多いと思います。しかし、購入者の保険を使った場合の自己負担金は請求されたり、負担責任者を巡って裁判(仲裁)になる事もありますので、注意が必要です。また、保証とは別に運営上のテナント、設備やメンテナンスについての質問なども購入者もしくはその管理会社から来ることは日常茶飯事ですので、売ったら全てが終了ということには行かないのが現状です。特に管理会社からの納税に対する項目の請求書やレシートの請求などはよくある話です。

では今週も皆さんにとって実りある一週間になります様に。

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