前回のブログでは、建築のプロセスや行政についてお話しをしましたので、今週は建築融資ついてお話ししたいと思います。私としましてもアメリカや海外での経験に慣れており、カナダの融資方法については、学ぶことがまだ多々ある状況です。よって、2年後のプロジェクトが竣工し全てが売却済みになった時点で、再度このプロジェクトを振り返ったまとめのブログを書いてみたいと思いますが、今回のブログでは、現時点までの状況について色々ご説明したいと思います。

1)カナダの融資概要

まず融資についてですが、主に二種類の融資が存在します。一つ目は購入(および運営)時用の融資で、もう一つが建築や改築用の融資になります。購入用の融資の方が二つの中でもプロセスは簡単で、書類の量も少なめです。また購入融資はアメリカと異なり、融資率(LTV)は60%に抑えられています。アメリカの融資では75や80%ほどのものも通常の融資で存在しますが、カナダの場合には60%以上のものはメザニン融資の区切りとなり、金利も一気に跳ね上がり年率15から20%になります。またカナダの場合には、メザニン融資を取り扱っている一般金融業者の数も少ないため、このレンジのものは投資銀行やメザニン融資などのハイリスク商品に特化した金融業者からの提供になります。また、バンクーバーではハイレベルの富裕層が多く、彼らによる個人融資もメザニン融資として提供されています。ただ、これら富裕層はお店を構えている訳ではないので、あくまでも個人のネットワーク上のつながりでアレンジされる融資になります。その場合においても、金利は約18%で期間も短く設定されています。現時点の2019年11月時では、一般的リテール銀行からの融資金利はプライムレートに2.25から2.75%が足された金利になり、現時点の5年間定期金利のみの融資で約4.75%から5.25%になっています(弊社同状態企業に対して)。

また、アメリカの場合と異なる点は、カナダではいくら物件がカナダ国内に所在していても、債務者がカナダ国内に在住しない場合には一般的に借りられない事になっています。この考えの裏には、いくら物件が存在していたとしても、物件だけでは収益を生むことは出来ないという考えに基づいており、各担保物権からの収益性は非常に大きな融資申請のポイントになります。またこのコンサバ的で、スタンダード・アンド・ポア社のAAAレーティングを得るカナダですが、その裏には融資の殆どが債務者の総資産ベースのリコースローンになっており、債権者にとってもリスクヘッジができている状況になっています。カナダの融資環境では、基本的に債務不履行による担保の売却は考えに入っておらず、あくまでも融資が完全に満期を迎える事が最低条件になっています。実際、バンクーバーでの債務不履行による商業不動産の強制売却は1%にも満たない状況です。

余談になりますが、弊社の様な物件の区分を購入する際、政府スポンサーのカナダ開発銀行などでは、購入者がオーナーユーザーの場合に限り、購入の90から100%融資を補助してくれます。よって、購入者としても金利は税金対策になり、元本は資本計上する事が出来る上に、満期には賃貸から離脱できる仕組みになっています。近年の中小規模企業(特に小規模企業)による区分所有不動産購入の活発化の裏にはこの様な背景が存在しています。

2)建築融資の場合

建築融資の場合は購入時に借り入れた融資をバイアウトする事で、担保権の変更を行い、融資が始まります。そのタイミングとしては、基本的には全建築申請が終了した際に、入れ替する事になります。また、融資対象項目は建築工事自体とそれに関連するソフトコストになります。このソフトコストには、購入時の仲介費、デューデリ関連費用や建築申請準備にかかる建築家のデザインや関連費用も含まれます。しかし、融資の金利や融資組成手数料などは含まれません。よって、購入融資で支払った金利や組成料などについては、建築ファンドを組んだ時に(もしファンドを組むのであれば)有限組合人などの投資家より払い戻してもらう事になります。

また、融資遂行のタイミングについても、建築申請が全て終了してからと上記で申し上げましたが、実際は臨機応変に対応して貰え、状況と条件によっては早期部分的融資も可能になります。例えば、建築申請が概ね通っていて、掘削許可が降りたのち、季節的に掘削を急ぐ必要がある場合には、その申請を行う事で条件付き建築融資が可能になります。その上で、上記でお話しした建築申請に掛かった経費を払い戻してもらう事も可能になります。

3)購入融資の場合

購入融資の場合には、融資額上限が60%とお話ししましたが、建築の場合には80%が上限になります。しかしこの割合も債務者の信用度で変化する為、通常の融資率はこれ以下になります。よって、弊社の場合では、大体70から75%ほどになると想定しています。また、融資額には土地代も含まれますが、この場合債務者(および組合)から土地代の50なり60%を払い込む条件が通常ついてきます。計算式でご説明すると、建築予算x 75% – 土地代 x 60% = 合計建築融資となります。通常の融資は金利支払いのみのものになり、竣工時若しくは売却完了時に全額が払い戻しになります。

日本の様に既に関係を持つ金融機関に融資の話を持ち込む事も可能だと思いますが、カナダを含む北米では、多々の可能性がある上に関係を持っている金融機関だから絶対に他より金利率を含め良い条件で提案が出てくるとは限りません。例えば、弊社のメインバンクは4大銀行の一行ですが、弊社の様な金額になると機関投資家向け専門の部署が出てくる事になり、そのレベルでの関わりを常に維持していないと決して良い条件は出て来ません。それに、この自由市場では、同じ安全性を確保しながらも、条件上優遇されたものを提案してくる金融機関は複数存在します。よって、この様な優位性を獲得する為にも、モーゲージ・ブローカーという融資の仲介を弊社では雇っています。これによりブローカーへのフィーを支払ってでも、金利で数十ポイント分節約する事が可能になります。そしてこれらの場合、申請者と金融機関の関係以上に、モーゲージ・ブローカーと金融機関の関係が重要になるので、活動盛んで金融関係と関係が深いブローカーを用いるのは必須になります。

今週は概要で終わってしまいますが、融資についてお話ししました。来週は投資家集めについてお話ししたいと思います。

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