今まで建築申請と融資についてお話しして来ましたので、ここでもう一つ大事なパーツであるファンド組成の際の投資家集めについてお話ししたいと思います。

1)北米での不動産開発

日本だと不動産再開発は個人や一企業単位で行われる事が多い様ですが、北米ではサイズに拘らず投資家を募っての不動産プロジェクトとして組まれる事が多いです。もちろん単独でプロジェクトを遂行するだけの資産があれば、投資家を募る必要もありませんが、投資家を募る事でリスクや経費の分割が出来る様になります。しかし、物件価格や建築費が継続して高騰している市場での単独での再開発事業は至難の技になります。特に、バンクーバー市場の様に物件への需要が常に多いと、購入価格もさる事ながら、建築コストを考慮した総建築コストは、相当な金額になります。例えば、弊社が今携わっている再開発物件は、購入がCND7MM(約6億円)ですが、土地代を含めた再開発プロジェクトとしては、CND28MM(約24億円)に達してしまいます。よって、融資を組む事で実質的購入持ち出し資金は$2.8MM(2.38億円相当)で済みますが、建築融資を組んだ後の再開発必要資本は$8.5MM(7.2億円相当)まで上がってしまいます。ですので、投資組合を組成して建築プロジェクトを立ち上げる事で、遂行が可能になります。

2)ファンドの仕組みー組合方式

投資家を募る際のファンドの仕組みも複数の選択肢が存在します。弊社の場合を含めた一般的に応用されるのが、組合方式です。組合ではデベロッパーがジェネラル・パートナーとして組合を組成し、リミテッド・パートナーとして投資家を募集する形です。その他にも有限会社を使ったりする事もあります。アメリカでよく使われるTenant-In-Commonも大まかな所、組合に近いものがありますが、カナダでは一般的に住宅物件用に追加われており、商業物件ではほとんど使われていません。その代わりに組合や組合組織を応用化されたBare Trust構造を用いる事が多いです。一般的組合の場合、ジェネラル・パートナーは無人のシェル・カンパニーでデベロッパーが代表としての取締役になり(よって無限債務)、プロジェクトを遂行します。これら投資組合は一任勘定であり、リミテッド・パートナーにはプロジェクトに対して発言権はありません。しかし、その分、定期的な投資報告書が配布され、各ステージでの投資状況が分かるようになっています。その上、配当時には、リミテッド・パートナーが先ず投資原本と投資リターンを受け取る権利が存在しているのが普通です。リターンの構造については下記でご説明致します。

バンクーバーの投資家相手で組成される組合では、デベロッパーはリミテッド・パートナーとしても参加し、通常5%から20%ほどの資本参加を行います。この資本比率の差はプロジェクトの期間やリミテッド・パートナー達への投資リターン率によって変化します。平均的バンクーバーのプロジェクトでは、4年から6年ぐらいが一般的期間で、これらは全て購入時から投資家参加を求める物になります。その場合、平均投資リターンはIRR=20%がハードルレートになっており、投資終了時には投資原本が2倍になる事を通常求められる形態になっています。日本ではこの様なリターンは考えられませんし、実際その様な率を提示されるとプロジェクト自体を疑ってしまうのが日本の投資環境ではないでしょうか?もちろん不動産事業はハイリスク案件になりますが、故にハイリターンを求めてくるのが、投資家の言い分です。実際、弊社が現在取り組んでいる1270 Frances Streetプロジェクト(投資期間2年で、建築申請済み)でも、投資家への配当はROIで年率18%を標準としています。余談になりますが、よって、日本国内スタンダードで不動産投資を検討すると、巨大な投資機会を損する事になります。弊社としては、弊社と共同投資を行うかは別として、この様な機会が当たり前として存在することを皆さんに知って頂きたいと思っています。この部分については、今後弊社が日本オフィスを設置する事で、色々な商品と可能性をご紹介できればと思っています。

3)配当や経費について

では、配当や経費についてもご説明したいと思います。配当では通常優先配当が設定してあり、年率6から8%が概ねの率になります。その上に、各配当ハードルが設定されており、ここは各スポンサー(投資組合を組成した人間;よって、この場合にはデベロッパー)の提案により異なります。また、投資リターンの表示方法としても、ROIベースで行うものもあれば、Waterfallと言って、優先配当の上にIRRベースのリターンを足したものなどがあります。ROIの場合には、今申し上げた様に、合計で年率18%ほどがマークになっていますが、IRRの場合には優先配当を行いその上にIRRでのハードルが2〜3段階に設定されています。当初の配当分配比率はスポンサーの資本参加比率によっても左右します。

同時にスポンサーのファンド負担運営費用としても色々なものが存在します。この経費も各ファンドによって異なりますので、次に出しているのはごく一般的な物になります。よく出てくるのがAcquisition Fee(物件購入フィー)、Mortgage Fee(銀行との融資折衝フィー)、Management Fee(年間管理費)、Trustee Fee(信託管理費)、Property Management Fee(物件管理費)、Disposition Fee(物件売却フィー)などになります。その上に、Construction Management FeeやTender/Bid Management Feeを重ねてくる所もあります。さらに重要なのは、各費用の利率ですが、これは色々な数字が出ています。バンクーバーにおけるManagement Feeについてはでは、1.50〜2.00%前後が一般的数値になっている様です。

では、弊社の考えはどうなっているかお話ししたいと思います。弊社の経費は、Acquisition Fee、Management FeeとDisposition Feeの3部からなっており、購入と売却で1.5%、そして管理費(購入価格に対して)として年2.0%を頂いています。それ以外のフィーは請求しておりません。また弊社では1ファンド一物件とする事で費用の透明性を明らかにすると同時に、フィーの簡素化から経費の行き先を明確にする様心がけております。その為、一部フィーは高めに設定してあります。

今後弊社が日本オフィスを設置する事で、多数の投資可能性をご紹介できることを楽しみにしております。

    ブログについてのご意見・ご感想(回答所要時間: 30秒)

    枡田耕治の週間ブログをご覧いただきありがとうございます。2018年1月からはじまったこのブログも、おかげさまで、200話を迎えることができました。そこで、読者の方にご意見・ご感想を伺いたいと思います。もっと読者の方について知ることで、皆様のニーズを把握し、より良い情報の提供、今後のブログテーマの参考にさせていただきます。ご協力いただければありがたいです。ぜひ、宜しくお願いします。

    *回答者の個人情報に配慮し、名前、電話番号やメールアドレス等は一切お伺いしていません。
    *ご返信をご希望の方は、コメント欄にメールアドレスをご記入ください。

    Q. 枡田耕治の週間ブログをどのようにして知りましたか。
    GoogleサーチFacebook紹介その他

    Q. ブログをお読みいただいている理由は何ですか。
    海外(カナダ)の不動産投資に興味がある不動産投資について勉強になる共感する点が多いその他

    Q. 今後どのようなテーマのブログを読みたいですか。
    引き続き、海外の不動産投資不動産投資プロジェクトの実例家業・事業継承海外での起業について海外での教育についてその他