今回のブログでは、不動産を賃貸収入目的で購入する場合についてお話ししたいと思います。今回は特に既存のテナントがいる場合の賃貸物件の運営についてお話ししたいと思います。

弊社では売却時の節税対策の為にシェルカンパニーを使って不動産購入を行っています。よって、同グループ内の会社であっても法律上関係のない場合の会社の物件管理はBC州の不動産法律上禁止されている為、弊社ではBC州公認(免許制)の不動産管理会社を設置しており、そこが各物件管理を行っています。しかし、法的処理以外の面では、完全な弊社の子会社関係に位置し経営されているため、今回のブログも自社運営・管理を行っている視点から、お話ししたいと思います。

1)購入までの注意点

購入までのデューデリは以前のデューデリのブログでお話した内容と同じになりますが、賃貸運営の場合には購入時前の時点で既に長期間の運営プランについても検討する必要があります。物件タイプにもよりますが、弊社の取り扱う中小サイズのインダストリアル物件の場合には、特に屋根、躯体、設備(空調、電源設備)、床などの状況を確認する必要があります。バンクーバーにおける中小型インダストリアル物件では、日本の様に高床になっている物件は少なく、むしろ低床式の工場的施設が一般的な物になります。よって、高床式倉庫の場合には、ローディングドックやドックレベラーなどについても確認する必要が出てきます。

各設備の耐久年数の進行や状況がひどい場合には、デューデリ終了前に全ての不備項目を一覧にして、売主と価格調整を行うべきです。市場の状況にもよりますが、入れ替え設備の満額値下げは不可能であっても、なんだかの価格交渉は可能なはずです。この様な価格調整も通常は仲介を通して売主に申し込みをします。価格交渉が不可能な場合には、Warranty(保証)として購入後の一定期間は問題がない事を売主に保証して貰う事も方法の一つです。

また、将来的資産設備の取り替え状況を把握する上でも(よって、投資物件のリターンを明確にする為にも)、最低でも購入後10年間の設備の取り替え予定表を作る事は必須だと思います。その際の各入れ替え設備の価格については、ゼネコン(北米のゼネコンはサイズも色々あるのでアプローチしやすいと思います)など御社と関係がある会社に聞いてみると、有償になるかもしれませんが見積もってくれるはずです。若しくはデューデリ時に呼んだ各業者に聞き込みを入れる事で概算把握は出来るはずです。また、デューデリ時にIncome Proforma(収益予測表)を作ったと思いますが、設備費用などを現金ベースでの出費を組み込ませて、所有者としての最終運用利益表は所持しておくべきです。余談になりますが、カナダの場合の融資に対しての支払い金利額は企業として不動産を所持している場合に限り、節税対策にできますが、個人での所有には節税が認められていません。ですから、どの様な場合でも不動産は会社所有で登録しておくべきです。これにより、Proforma上でも最終見込み利益が変化してきます。

2)運営上の注意点

運営上の案件では、所有権が移行してから、信託口座を速やかに設置し、敷金など(その他のセキュリティーデポジット)を入れて別口座管理する必要があります。冒頭にも申し上げましたが、御社が直接物件を所有する場合には、管理会社を別に設立する必要はありませんが、ストラクチャー上、法的に外注する必要がある場合もありますのでご注意下さい。そしてこれら敷金などのセキュリティーデポジットは別口座になり、法的上扱いはテナント所有資産になりますので、オーナーが契約書内に記載されている特別な権利以外(例えばテナントのデフォルトなど)触れることができない金額になっていますので、注意する必要があります。ただし賃貸契約書内で特別に記載してある場合には別です。また、もう一つの注意点は、クロージング時の明細書には各敷金を詳細に計上していません。よって購入者は各敷金の金額を確認すると同時に、自ら新たに信託口座を設置して、その中に既存テナントの敷金を振り込む必要があります。決して売主の信託口座の名義変更などで口座自体が移行してくる事はありませんので、ご注意下さい。そして、この敷金と信託口座の残高が一致した証明書を不動産業務管理委員会の監査などで提出出来ない場合には、罰金を含め法的に罰せられる事もあるので特に注意が必要です。

賃貸運営上はレントロールという、賃貸状況のサマリーを作る事も効率化の為に必要です。これには賃貸価格や賃料改定予定、支払日、賃貸の期間、更新オプションの有無、契約面積、特別条項やテナントの連絡情報が書き込んであります。

統括運営する上でも、テナント・マニュアル(物件取り扱い仕様書)を作成する事は大切だと思います。どの様な契約形態であっても、マニュアルがある事で、災害や緊急時の対応も一般化でき、敏速な対応が可能になります。日常の使用にもルールの適用が可能になり、警告後も順応しないテナントには超課金などを請求する事も可能になります。(賃貸契約書に別記載される必要があります)また、マニュアルにはテナント情報を書き込むページを設けておくと良いと思います。この提出により、緊急時の担当者連絡先やセキュリティーシステムの管理会社情報など、テナント運営が把握できる様になります。この情報は特に警察マターが起きた場合に便利になります。警察(我々の方で要請しなかった警察対応)などは各テナントではなく、物件所有者登録情報により、所有者(管理会社)に連絡をしてきますので、時間外におけるテナント対応が必要な場合には、テナントとの連絡が取れる手段を持っておく事は必須です。

少々マイナーな事ですが、鍵の統一システムも運営の効率を高める上で必須です。マスターキーシステムに変更する事で、将来的管理コストの削減につながります。特に既存の複数のテナント物件である場合には、各テナントによって、鍵の種類が異なる事が多く、また既に使われていない鍵を引き継ぐ事も多々あります。セキュリティー上からも所有権が移行したら、最低でも各テナントスペースの鍵は変更するべきですが、その際にマスターキー化する事を検討すると将来的管理費の節約にもつながると思います。

運営上特に重要になるのは、契約形式と契約更新条件です。契約形式ではグロスレント(全てを含めた一括計上型契約)かネット契約(賃料以外はテナント負担形式)かによっても、物件管理にかかる時間は変わってきます。例えば、グロスレントですと、初年度の年末には価格調整が入り不足分の共益費は請求が可能になりますが、2年目からは普通は上昇率(や価格)で共益費の上限が設定されている場合が多いです。よって、不足分はオーナーの持ち出しになりますので、注意する必要があります。今週のブログの様に既存テナントの場合には、既に運営記録がありますので、それほど心配する項目ではないかもしれません。また、契約更新オプション(若しくはオーナーによる解約権利)が含まれている場合には、その連絡方法や期日も契約書に記載されているはずですので、厳重に確認しておく必要があります。

今週は賃貸運営という事でも既存のテナントがいる場合の物件運営についてお話しいたしました。来週は新規テナントの場合についてお話ししたいと思います。特にテナント工事など、入居までのプロセスについてお話ししたいと思います。

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