今回からまた少々ペースと視点を変えたトピックでミニシリーズを書いてみたいと思います。今回のミニシリーズではカナダ(バンクーバー)における一般的人間性、職務状況(雇用も含め)や海外で仕事につく上での留意点などについてお届けしたいと思います。今回の情報は、枡田の個人的意見のみならず、会合や他社同業者たちとのミーティングの中で出て来た点を拾い上げて、お送りしたいと思っています。また、これら点については、ポジションは関係なく、企業が成長していく上で、求められているものとお考え下さい。

1)ミニシリーズ第一話目のトピック

では今回このミニシリーズ第一話目は、バンクーバー人口の典型的な人間性についてお話ししたいと思います。この場合の「典型的」と言うのは、この地区に最低でも20年以上バンクーバーに在住する人口やバンクーバー生まれの人口を括って指すことにします。よって、人種から来る違いはないものと考えることにします。まず、最初に、カナダはアメリカと同じ北米ですが、国民性はだいぶ異なり、どちらかというと日本に近いと思います。よって、人間の「輪」と「和」を重んじる、協力的な仕事関係を求めるところが多くあります。よって、求められている人間性でも良く会話に出てくるのが、「チームワーク」、「共感性」、「ゴール重視」です。最初の二つは人間関係上の点ですが、最後のゴール重視というのは、仕事に対しての姿勢と理解して頂いても良いと思います。

また、アメリカの職務環境を切り捨てる様な感じでは決してありませんので、そこはご理解ください。30年ほどの北米職務経験で感じたのは、国レベルでの違いも多くあると思いますが、地域性というものでも大きな違いが存在すると思います。例えば、カナダとアメリカでは、カナダの方がお人好しというか、ハングリー性に欠けるというか、ゆっくりしているところはあるものの、東海岸と西海岸で見た場合には、カナダもアメリカも似ていると思います。アメリカのニューヨークとシアトル(および西海岸都市)で働いていた頃は、西海岸の方が統一してゆっくりした人間性を強調するところがありました。ニューヨークではやはり環境的な面からも、せかせかしていて自分が登り詰めていく環境だった様に思いました。西海岸の大都市であるサンフランシスコなどでも向上心や要求度は高く設定されていましたが、やはり物事へのアプローチや対人関係などは東海岸よりマイルドだったと思います。これはカナダのトロントとバンクーバーを見ても同じことが言えると思います。

2)チームワーク

では、各ポイントについてもう少し細かくお話ししていきたいと思います。なお、上でもお話しした様に地理的違いや国性の違いも生じるので、このシリーズではカナダの西海岸であるバンクーバーでの環境をもち入り、お話ししていきたいと思っています。

チームワークとは、最終的な成功はゴールを協調した共同作業に成り立つという考えです。もちろん日本の職務環境の中でも、このコンセプトについては強調されていると思いますし、私が働いていた頃も重要視されていました。ただ、日本の場合には役職で割り切られたチーム環境が協調されていたと思います。よって、上司の言う事は殆どの場合、話し合いはされるものの、強い抗議もなく物事が進むという感じだったと思います。これはニューヨークなどでも同じ様に感じました。ミーティングなどの時間短縮なのか、縦割り経営が重視されていた結果なのかまでは、分かりませんが、多分両方だったのではないかと思います。しかし、西海岸の様に人間関係がフラットな場合には、役職上の権力ベースとなる縦割りの議論は殆ど行われていません。なので、議論する案件についても多くの参加者の意見が出され、協調性があると思います。性質的にも話し合いが長くなるのが西海岸だとよく感じます。

バンクーバーでは、チームワーク=win-winな関係という考えが強く、役職を隔てた全員参加やachievement based on contribution(役職に関係なく貢献度によっての賞賛)が多くの企業で活用されています。個々の考え方や仕事への態度がチームの成功に関わる為、就職活動の際の面接でも強調して聞かれるポイントです。まずは会社の理念や価値観に賛同しているか、その上で具体的にどの様な行動に表されるかなど、具体的な例を用いて質問されます。そして日常の職務でも、「good job(良い仕事したね)」などと小さな達成でも頻繁に称え合います。お互いの人間性を認め、同じゴールに向かって進む仲間と考えるからこそ、称賛し合うのだと思います。

3)共感性

共感性(Empathy)は、特に経営の本や大学院などでも話題になっているトピックです。一昔前にEQ(Emotional Quotient)が話題になりましたが、現在の職場では共感性や人の感情面での理解などはとても大きなトピックになっています。複数の人間性の括りでまとめた経営書物も出ていますが、バンクーバーなどの西海岸都市ではこの共感性というのは大きなブームを呼んでいるトピックです。ワーク・ライフ・バランスが重要視されている中で、社員を利益達成の一コマと見る様な事はせず、仲間としての理解、そして出来るだけ柔軟で双方の利益関係を最大化するスタイルが取り入れられています。バンクーバーやシアトルではIT業界が筆頭して、高レベルの新社員を見つけるのが困難になっている為、雇用主が強いスタンスを維持出来ないのも、この流れを後押ししていると思います。しかし、それ以上に、この地域の「文化」としても、仕事はあくまで仕事で私生活を犠牲にしてまで強調するものではないという考えが主流と言うところから来ていると思います。これは部下だけに言える事ではなく、上司も雇われの身として同じ考えを共感しています。またのちのブログでも述べますが、西海岸では朝方が主流です。その分、夕方の5時5分過ぎには退社している社員(上司を含めた)も多くいます。よって、上司と部下の間でも会話も頻度が多く、上司が部下との関係向上に努めている場合も多くあります。

4)ゴール重視

ゴール重視という人間性は上の2点から異なる様に思われるかもしれません。しかし、冒頭でもお話しした様に、典型的人間性を示すものだと私は考えています。人間性は協調的でゆっくりしている所が有るとしても、北米人はどこでもよく働くと思います。無駄な時間がないと言った方が正しいかもしれません。特にバンクーバーの過半数における企業の従業員数は5人以下という事もあり、仕事の量も多く、各自の貢献が各社のボトムラインに直接反映する様になりますので、みんな必死です。また、この地域の人々は基本的に真面目で、Honest Pay for Honest Work(正しく働いた分の支払い)というコンセプトを尊重しています。もちろん、仕事の量をこなすと言うのと効率は異なりますが、一般的には私語も少なく与えられた仕事を目的に沿ってこなしていると思います。ですので、雇用主からしても、社員に対しての信頼は厚く、雇用関係は概ね良好な関係が確立されていると思います。

北米人の人間性を一言でまとめるのは地域性からも無理です。しかし、上でもお話しした様に、東と西では共通した人間性が見られると思います。この様な中、西洋部に位置するバンクーバーの人間性はとても温厚で、日本に似ているところもあると思います。唯一の違いは、バンクーバーなど西洋部の方が共感性からくる全員参加型の意見を取り入れる環境が成熟していることです。

では、これからバンクーバーでの雇用や職務状況(雇用も含め)や海外で仕事をしていく上での留意点などについてについてお話ししていきたいと思います。