ここ2週間はバンクーバー人の人間性などについてお話ししてきましたが、今週は企業や職務環境についてお話ししたいと思います。

1)バンクーバー圏の基本的情報

まずはバンクーバー圏の基本的情報ですが、サイズは2,700平方キロメートルからなっており、これは東京都の2,200平方キロメートルを少々上回る大きさになります。バンクーバー圏の人口密度は1平方キロメートルあたり、1,000人にも満たない状況です。しかし、これでもカナダの中では、3番目に大きな市街都市にランクされています。特にバンクーバー市においては、人口密度も5,250人まで上昇し、カナダ国内で一番密度の高い都市になると同時に、北米全体でも4番目に入ります。情報までにですが、BC州は日本の国土の約2.5倍を占める大きさで、人口密度は4.8人/平方キロメートルになります。ちなみにカナダの人口密度は、3.7人/平方キロメートルからなる自然に囲まれた国なのです。

近年では外国からの人口流入(特に中国や東南アジアや欧州)が継続的な増加傾向にあります。これ以外でも興味を引くのがアメリカからの流入です。数値的には把握していませんが、近年のネットやハイテクバブルにより、この業界の登竜門とされているバンクーバーへ来る若年層のエンジニアやプログラマーの流入が目立ちます。またこれは個人的な感想ですが、旧ソビエト連邦諸国やドイツ系の人口も増加傾向にある気がします。現地移民弁護士曰く、仕事は多忙でドイツ系や中近東系からの依頼が多いそうです。

現時点の2020年初めで、バンクーバー市の人口は約250万人おり、この数値は今後も上昇軌道にあり、2040年までには約350万人まで成長する予測だそうです。

2)企業状況と税率

企業状況として2018年のBC州統計局(BCStats)では、10人に一社(1,000人中に101.9社)の割合で小規模企業(社員49人以下の企業)が存在するそうです。しかし、実際には州全体で517,100社ある企業社数中の98%に及ぶ508,700社が小規模企業に当てはまります。従業員がいない完全な単独事業者は315,200社もあり、全小規模社数の61%になる計算です。

税金面では、現地登録中小規模企業に対しての州税率は2%に設定されています(この枠以外は12%)。またカナダの中小規模企業に対しての連邦税率は9%になっており、連邦と州レベルの両方を足した合計でも11%のみになっています。ちなみに連邦企業税率も、この中小企業枠に値しない場合には15%になり、合計で27%の税率になる計算です。通常でもカナダの税率は魅力ある率ですが(アメリカ・ワシントン州で28%)、この中小企業枠はさらに魅力を増す材料であり、起業しやすい環境を作り出しています。この上に、起業するには最低資本金額などもなく、企業登録のみであれば同日中に完了してしまします。その上、設立・登録費用も低く設定されており、15万円以下で起業ができるシステムになっています。

近年で企業数が増加して来たのが、テレコミュニケーション専門職/サイエンス/テクノロジーや建築業などです。これらは全て現在のBC州(特にバンクーバー)の経済発展を映し出しており、テレコミュニケーションやテクノロジーについては、今後もさらに伸び続けていくと思われます。そして、建築業においては、上で挙げられていた単独事業者を代表する下請け企業が多く、現在も継続している建設ラッシュで今後も増加するのではないかと見ています。

3)信託状況

信託状況についても、カナダの政策は前向きだと思います。オフショア信託を相続前に与益者が設置する事で、信託の役割は始まります。また、受益者もカナダに在住する必要もありません。もちろん、カナダ在住の方がメリットは多いのは事実です。その反面、与益者はカナダに在住する事が出来ず、信託も第三者による管理が義務付けられています。日本人にとっては、これは逆に良いことで、ご年配の与益者が海外に住むのは困難であるという現状を救ってくれていると思います。

ただ、信託にも細かい決まりがあり、特に資産の引き出し方や使い始めるタイミングについては細かく定められています。Taxable Canadian Propertiesという項目品は課税対象になり、与益者に購入時をベースとした資産増額益に対して課税される仕組みになっています。よって、これに含まれるカナダ国内の不動産、木材資源、組合、リゾートなどは信託に取り込むメリットが失われてしまいます。しかし、海外(日本)の不動産を相続した場合には、売却時までは税金対象になりません。賃貸として貸し出した場合には、カナダにおいても世界収入で税金が計算される為、課税対象になります。信託を用いるブレーク・イーブン資産額はおよそ1億円と言われています。

4)企業の環境について

では、実際の企業での環境はどの様なものなのか、高い位置からお話ししていきたいと思います。バンクーバーの各企業サイズが小さいことから、フラットで透明性が高い会社が多く、ハングリー精神が旺盛な企業が全体的に多く見られます。そして、失敗してもすぐに立ち上がる反発力を備えていると思います。やはり、これらは小さい企業における競争率が激しい環境によく見る共通点だと思います。

では、まず透明性な点についてお話しします。すでにお話ししてある様に、会社が小さいため、社員全員で助け合い、みんなで会社を動かしていくという考えがすごくあると思います。よって、お互いへの信頼度も高く、頼り合うところも多いと思います。もちろん社内では、業務遂行上の上下関係も存在しますが、チームワーク的考えも強く、以前のブログでもお話しした様なお互いへの尊重はとても重要視されていると思います。

この様な状況の中で、業務を遂行していく為には、情報の開示やお互いの業務を開示する必要があります。日本でも行われていると思いますが、各業務の状況把握を目的とするミーティングや意見の交換は頻繁に行われています。ましては従業員数が少なければ、オフィスのサイズも小さく、インフォーマルな井戸端会議的ミーティングもよく行われています。

一般的な考えとしては、仕事を抱え込むのはスマートではなく、逆に仕事の対処能力が問われてしまいます。なので、常にチームワーク的に仕事を流し、完結する仕組みがとられています。多忙な人間でプロジェクトがあればあるほど、チームワークを強調し、情報の開示とスムーズな業務の流れを目指している様に思います。

5)ハングリー精神が旺盛な理由

二番目のハングリー精神が旺盛な企業文化についてですが、これは正に、起業者の試みを反映していると思います。会社サイズが小さい為、新規従業員として呼び込む人間たちも同じ様な起業家的マインドを持っている人たちが多い様に思います。従業員内での考えの共感や企業の方向性に対しての同じ考えは将来的企業業績を左右する為、似ている人たちが集まりやすくなっていると思います。また、雇用コストが高いのも、似ている人間が集まるという面では大きな影響要点だと思います。

現在のバンクーバーで人気があるハイテク、サイエンス、医療研究などは、業界の進行スピードが早く、生き残る為にも、敏速な対応と今後のステップを常に考えた対応が求められます。また、新興企業の生き残りは、新たな分野を切り開くか、既存の業界のパイを一部取得するしかありません。よって、生き残りをかける意味でもハングリー精神が旺盛で敏速な対応とアイディアで生き抜こうとしている企業が多いと思います。

6)企業の事業について

同時に、この様に競争が激しい環境の中では、決して全てのプロジェクトがホームランというわけではありません。よって、失敗や座礁も多く経験している様です。しかし、生き残る為と今後の繁栄のためには、そこから這い上がることが重要で、失敗した後の復活戦に対する思いと行動力が将来的成功の鍵を握っていると思います。しかし、BC州はカナダ国内でも最も倒産率が低く、2018年の資料では1,000社に0.1社の確率だそうです。これは2017年の0.2社からさらに降下しています。

ハイテクのスタートアップ企業における出口戦略は、上場を成し遂げるか一つでも良い技術を発明し買収される事だそうです。上場まで持っていくのは困難なのが現状ですので、赤字状態であっても、売却を狙うそうです。そして、成功した技術のおかげで、億万長者になる若年者も少なくありません。この様な成功者は、その売却利益を種に次の起業に進むのがバンクーバーの傾向の様です。

バンクーバーの企業状況は他の市場と違い、本社都市ではない事で全体的に企業の規模が小さく、シリコンバレーをはじめとするサンフランシスコやシアトルの影響で起業センチメントが多く存在しています。人口が少ない為に、この様な傾向が一層目立っていると思います。バンクーバーの環境とカナダの継続した若い専門職を中心とする移民政策はこの傾向を継続させ、今後はさらにバンクーバーを強くするものと思います。