先週までのブログではカナダ(特にバンクーバー)に住む人たちの人間性やここでの仕事についてお話ししました。今週は、どうやってこの様な人間性と生活スタイルを重視した人間が構成されたのかについてお話ししたいと思います。ただ今週のお話は特に私の個人的な経験や身の回りの話をベースになっていますので、その点はご了承下さい。

カナダ人(バンクーバー人)というのは、西洋の中でもちょっとユニークな国民性を持っていると思います。これまでお話しして来たポイント以外にも、バンクーバーの人間の典型的人間性は協調性、仲間意識、共感性などがあげられると思います。よって、昔からの在住者には、日本の長屋的付き合いの気楽で飾らず接したり、輪と和を大切にする傾向があります。ですから、歴史的な上下関係や貧しく酷い生活を虐げられた過去があっても、日本人にとっては共存しやすい人言性なのだと思います。また、元々は 伝統的なイギリス風環境でしたが、これも時間と共に変化して来たのかもしれません。

現代のバンクーバー人を説明する上では学校の教育事情が大きな人間性構築上の影響を起こしていると思います。例えば、知恵対知識、ロジカルシンキング(理論的な考え方)、包括的教養や自由研究などを取り入れた、「使える教育」指導なのではないかと私は思っています。30数年前に経験した教育現場では、すでにこれら点が導入されており、それは今の娘の世代の教育事情でも反映されています。

1)カナダの教育一例

日本では残念な事にまだまだ知識を重要視した詰め込み型教育ですが、こちらでは、知識は知識で学び、それをどう活用出来るかが重要視されます。例えば、娘の小学校4年生の授業では、今まで原住民の人たちについて学んでいました。知識として博物館訪問やクラス内の授業で学び、歴史や居住地域をはじめ、どうやって生活しているのか、なんで西洋人の生活と違ったのか、その時代に住むとしたら、各自どの様なことを違う様にするのか、そしてそれは何故?という自分の視点で考えさせることが多く取り入れています。算数の九九でも九九を暗記するだけでなく、各九九の数字の組み合わせを足し算も用いて、コンセプトの裏側の理解を強調しています。(例えば:24 = 6*4; 12+12 -> 4+4+4+6+6 -> 4*3+12など)この様にして、各コンセプトのオーナーシップ(熟知)させる事に焦点をおいています。これにより、知識だけでなく、応用性と活用性を狙っています。ただ、この様な教え方をしているので、4年生の娘はいま掛け算が概ね終わり、割り算を始めたペースです。

2)ロジカルシンキングと包括性

ロジカルシンキングという意味では、子供達に「ストーリーとして物事を考えさせる」とことを強調しています。物語の序幕、中盤、結末の様な感じで、一つの考えに対して自分の仮定のシナリオを作り上げ、それを沿って肉付けし、結論まで持っていくプロセスです。そして、その結果何が起きたかなどの連鎖の行方などについてまでも話を掘り下げて行きます。面白いのは、ロジカルシンキングもコンセプトのみで勉強するのではなく、上の知識や知恵を巻き込んで、自分の理論の正当性を説いていきます。昔中学・高校を始め、特に大学では、よく教師(教授)に「そのアイディアはこの順で考えられないか」とか「結果どうなったのだ」という質問を投げかけられていたのを覚えています。そして、次に話す包括性を用いた違うトピックの関連性や因果関係も取り入れ、自分の考えに筋を通す事を教えられます。

包括性(的)とは、多種の教科(考え)を取り入れ、関連性や因果関係を理解して一面図で理解するという事です。社会は社会、理科は理科と、勉強するのではなく、例えば中世の赤十字軍の遠征は年号的にいつ行われ(歴史)、何故行われその前後はどういう状況だったのか(宗教、社会)、遠征をどうやって可能にしたか(金融)。そしてこの遠征からどうなったか?(社会、宗教、政治) この様に、各イベントを単独で見ず、色々な関連性や因果関係を検討する教育方法という事で、包括的とここでは名付けました。もちろん、これは学生にはすごく酷で膨大な勉強と全ての教科の知識が必要になります。しかし、これは私が高校2年性の時、まだ英語習得で苦しんでいた時に、ある教科の担任に言われた西洋の学校での成功方法です。彼曰く、この幅広い理解と点と点の様に違う教科を結びつける能力(よって関連性や因果関係を理解する)を持った生徒たちが秀才と呼ばれ学習面で成功する共通点だったそうです。言われるのはすごく簡単なのですが、遂行するのは不可能に近かったです。。。でも、この勉強方法も上記でお話しした「使える教育」の一つだと思います。

3)まとめ

また、こちらの学校では高校レベルになるとPrep Timeという自習時間枠が設けられたり、小学校では自由研究時間で自分が好む物や事をする時間があります。この時間では何も決められておらず、生徒が各自好きな事、興味がある事を行う時間なります。よって、4年生の中では、陶器を作る子もいれば、組み立てキットのドローンを作る生徒もいます。また、作るだけではなく、より上手に飛ばす方法などについても自己研究します。この様に自ら何かをやり起こす気持ちを促す環境に置き、興味を引き出して、勉強を取り入れています。

今回は教育環境についてお話ししましたが、結論的には自信を備え付けるというのが共通点なのではないでしょうか?自信があるからこそ、社交の場にも出ていくし、新しい事に挑戦してみたくなり起業する。そして、学校の勉強は教養の習得方法を教えるだけで、一生その方法で知恵や理解を増やすことが可能になるという仕組みです。私としては魅力ある教育方法だと思います。